次々と新しい機種が登場し、それと引き換えに多くの機種が消えていく世の中。
その消えゆく理由は様々ですが、多くは単純にゲーム性やシステム等が万人に受け入れられなかったから…でしょう。
ただ、中には後々思い返した時に、“時代を先取りしすぎていた”とか“むしろ時代が付いてきていなかった”と思うモノが存在します。
ほんの少し時期が違えば栄光を掴んでいたかもしれない。
それこそが「栄光なき名機」と呼ぶにふさわしいのではないか、と思うのです。
そして、今回私タイラが紹介する「パチスロ天外魔境」もまさにそんな1台です。
4号機のシステムが復活!?
パチスロ天外魔境 卍MARU…三洋 2009年8月導入
5号機と6号機が混在する現在、そのゲーム性は多種多様ですが、中でも多いのが“規定ゲーム数管理のAT・ART機”。
最近導入された「まどか前後編」然り、未だ根強い人気を誇る「リゼロ」然り。
パッと思いつくだけでも10機種以上は余裕で言えるくらい多くの台がその仕様です。
元々は4号機のストック機で人気だったゲーム性を再現したと言えるこのシステム。
これが5号機で浸透したのは、初代「モンキーターン」や 「押忍!番長2」あたりからだったでしょうか。
モード管理による連チャンや、ゾーンの存在…これらにより、ゲーム性だけでなく立ち回りの幅も格段に広がった時代でした。
しかし、そのなんと2年も前にそんなゲーム性を搭載した機種が登場していたのです。
それがズバリ「パチスロ天外魔境」。
通常A、通常B、天国モードの3つで管理された規定ゲーム数消化によりARTが発動。
もちろん天国なら128G以内のART当選が確定するし、他にも最大32G間の前兆、そして1G連…と並ぶ言葉はまさに4号機のストック機のようでした。
■ART「暗黒ランチャンス」
・純増約1.8枚/G
・ベルナビ回数管理(16回/33回/50回/75回)
・7揃いやレア小役の一部で1G連ストック
もちろん5号機なので4号機の出玉性能には遠く及びませんでしたが、擬似ボーナス的なARTとしては、現存する機種と比べてもそのシステムはすでにほぼ完成されていました。
ナビ回数管理で、分岐の度にBETで「まだまだー!」となるか…という、これまた4号機チックなゲーム性だったのも面白かったですね。
そしてさらに、演出面に関していえば4号機はおろか現存の機種にも劣らないのでは…と個人的には思うのです。というわけで、自分が最もアツくなった瞬間を紹介しましょう。
BETで流れる気持ち良さ
本機ならではのアツい瞬間といえば、天国モード。
今でこそ当たり前の天国モードですが、何度も言うように当時はゲーム数管理のART機が他に存在せず、まさに“本機ならではのウリ”だったのです。
そして、本機にはその天国モードが確定する演出が複数存在し、それが演出面で良いスパイスとなっていました。
中でも気持ち良かったのが「黒ナビからのBETでBGM変化」。
ART中の押し順ナビは基本的に白ですが、たまに黒ナビが出ることがあり、その際はチャンス!
ベル獲得後のBETでBGMが変化すれば、なんと次回天国モード確定!
その変わった瞬間の気持ち良さは自分のパチスロ人生史上で未だにトップクラスです。
天国モードを願いつつBETを叩いた次の瞬間、一瞬の静寂の後…
「…タンタンタン、タンタンタン♪時代、時代、時代、時代、天外! 時代、時代、時代、時代、てーんがーい♪」
…文字におこすと少々マヌケな気もしますが、自分はこのキャッチーな曲の虜に。
その証拠に一時期ケータイの着メロをこれにしていました。
今思えばイタイ気もしますけど…。
ちなみに、1G連が確定してBGMが変化する台は結構存在するんですが、BGM変化で天国モードが確定する台って不思議とあまり無いですよね。
通常B狙いで美味しい思い
今でこそモード狙いやゾーン狙いは一般的ですが、当時自分の周りでは本機で立ち回っている人は全然いませんでした。
4号機時代に比べると見返りが少なかったからかもしれません。
そんな中自分は本機中心に立ち回っていた時期があり、その思い入れもあって、今回取り上げたという面もあります。
正直、本機は天井近くまで連れていかれることが多く、ゾーン狙いには向いていませんでした。
一応レア小役での強制当選もあるのですが、かなり薄いんですよね…。
では、自分が何をどう狙っていたのか。
実は、本機はARTのほかに純正のBIGも搭載しています。
その確率は1/2000近くとオマケ的な立ち位置だったのですが、その代わりBIG後は通常B以上確定という特徴があったんですね。
そして、通常B後は約60%弱で天国モードに移行、天国は約50%以上でループ…ということで、通常Bはいわゆる美味しい状態。
というわけで、BIG後に天国に移行していない台をひたすら打っていました。
最近でいうところの、「沖ドキ!」での立ち回りに近いですかね。
しかも通常Bが確定するという。
正直立ち回りとしては、ただそれだけなのですが、当時は今みたいにSNSなどもほとんど無くライバルは皆無。
実は、その時の考察や自分なりの分析が多少なりとも自信となり、自分がパチスロライターを志すキッカケの一つになっていたりもするのです。
さて、というわけで、今では当たり前に存在するゲーム数管理のAT・ART機ですが、天外魔境こそがその元祖。
当時、4号機から打っていた人達の間ではそこそこ話題にはなったと思うのですが、結局流行ることなく気付けば消えていました。
その後、「モンキーターン」や「番長2」が人気を博し、このシステムが中心となるまで約2年かかったことを思えば、いかに時代を先取りしていたかが分かります。
もちろん後に登場する機種に比べて、セット数の上乗せのみでゲーム数の上乗せが無かったり、レア小役での当選にはあまり期待できず、深いゲーム数まで連れていかれるのが基本…だったり、たしかに足りない面があったのも事実。
それでも、ゲーム数管理のAT・ART機がメインの現在の状況を考えると、一時代を築いていてもおかしくなかった…そう思わずにはいられないのです。
「時代、時代、時代、時代、天外! 時代、時代、時代、時代、てーんがーい♪」
残念ながら、パチスロ天外魔境が新たな時代を作ることはできなかったかもしれません。
しかし、今なおこの曲と共に当時の情景が浮かぶことを考えれば、やはり間違いなく「名機」なんですよね。
(C)HUDSON SOFT
(C)RED
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