〇パチスロ攻略マガジンドラゴン2019年3月号より転載

月初めに仕送り5万円→パチ屋→無一文という生活を数か月続けていたヘミニク少年は、さすがにそろそろどうにかせねばなるまいという危機感を覚え始めていた。

そして考えに考え抜いた末、ある一つの妙案に辿り着く。

「そうだ。バイトをしたらどうか」

バイトをすればお金が増えるし、パチ屋へ行く暇も無くなる。

一石二鳥とはこのことである。

ひとつ問題があるとすれば、学業だ。

この頃専門学生2年目の4月、卒業まであと1年もある。

果たしてバイトと学業を両立出来るのか、その点だけが唯一の気がかりであった。

しかし、ヘミニク少年はやってやれる自信があった。

なぜなら、この時すでに就職先から内定を貰っており、進路を決めていたのである。

つまり、バイトをして多少成績が落ちたとしても、退学になるようなヘマさえしなければ、何の問題も無いということだ。

早速ヘミニク少年は履歴書片手にバイトの面接へと向かった。

向かった先は、そう、貯金を根こそぎ持っていかれた、あのにっくき八王子駅前のパチ屋である。

パチスロで負けて、パチ屋でバイトをする。

よくよく考えればタダ働きみたいな行為なのだが、パチ屋の時給は他のバイトと比べて頭ひとつ抜けていて、とても魅力的に見えた。

パチ屋の内部事情なんかも分かるし、ヘミニク少年にとってはこの上ないバイト先であった。

ひとつ計算外なことがあるとすれば、このパチ屋は想像以上に規律・規則が厳しかったことである。

身だしなみはもとより、お辞儀の仕方、笑顔の作り方、声の張り方まで、徹底的に叩き込まれた。

初めの2週間はホールに出ず、裏部屋でひたすら声出しの練習やらをしていた。

研修期間が終わると、ようやく配属先が決まる。

1階がパチンコフロア、2階がパチスロメインフロア、3階がバラエティーフロアといった配置で、未経験者はパチンコフロアに配置されることが多く、目押しや遊技方法の説明など求められるものが多いパチスロフロアは、経験者が配属されるのが基本だった。

そしてヘミニク少年が配属された先は、なんと2階のパチスロメインフロアであった。

なぜいきなりパチスロメインフロアに配置されたのか、理由は簡単である。

面接で 「趣味はパチスロでよく打ちます！」 と言ったからである。

この時、ヘミニク少年はパチスロを覚えて数ヶ月、しかも北斗の拳しかまともに打ったことがないにもかかわらず、なぜかそんな見栄を張ってしまった。

そんな状態で果たしてパチスロメインフロアが務まるのか、一抹の不安は早速現実のものとなった。

主任「最近、吉宗でゴト被害が多発しています。BIGの1G連契機を引いた台は報告して下さい」

ふむふむ。

吉宗はBIGが1G連すると聞いたことがある、それを引いたら報告すればいいんだな。

吉宗は一度も打ったことはないが、スロ漫画で覚えた知識を何とか引っ張り出して吉宗コーナーを巡回。

すると目の前の台がBIG中に7が揃って1G連発生。

よし、インカムで報告だ。

ヘミ「吉宗が1G連しました！」

主任「契機はなんだ!?」

ヘミ「契機…？　キーンです！」

擬音！　

フロア全員に繋がっているインカムから、そんなツッコミが聞こえたような気がした。

このキーン事件で素人ということが露呈してしまったヘミニク少年は、以後3階のバラエティーフロアへと左遷されたのであった。

しかしそんな失態があったものの、パチ屋のバイトは楽しかった。

フロアに長時間居ることは全く苦ではなかったし、ボーナス中のサウンド、詰み上がるドル箱、発表される設定示唆札に、仕事をしながらも日々ワクワクしていた。

こうしてヘミニク少年はバイトでコツコツ負債を回収しながらも、どんどんパチスロの深みにハマって行くのであった。

今回の格言
パチスロで負けた金は
パチ屋で働いて取り戻せ！

吉宗

2003年6月に登場。

BIG1回711枚獲得可能で、さらにそのBIGが1G連するというストック機最強の爆裂マシンである。

その反面、天井バケ単発を喰らうと6万円負けまで見え、貧乏人には手が出せない台であった。

設置台数も当時歴代2位で、爺BIG中の「キーン!」は多くの中毒者を生み出した。

パチ屋の時給は1500円前後で、めちゃくちゃ割が良い。

ただし、パチ屋でバイトするとパチスロ打ちたい欲求が抑えられず、結果的にパチスロを打って散財してしまうので、まずはパチスロをやめないとバイトする意味は無いぞ。

(C)DAITO GIKEN,INC.