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【スロプロへの道】負け組からの脱却【第2回・北斗の拳編】

お兄とニートと童貞ヘミニク

〇パチスロ攻略マガジンドラゴン2018年12月号より転載

2005年、ヘミニク少年は高校を卒業した後、東京の自動車整備専門学校へ進学した。

車が好きだったので、仕事をするなら自動車関係がいいと漠然と思っていた。

学校の所在地は八王子市。

地元福島にも専門学校はあったのだが、どうせなら就職に有利な方にしようと東京の学校にしたのである。

 

上京当初、ヘミニク少年はパチスロに興味が無かった。

大花火以降パチスロは打っていなかったし、打つ機会も無く、いたって普通な学生を送っていた。

しかしその年の年末年始に地元へ帰省した際、転機が訪れた。

友人2人と夜更けまで遊んでいた翌早朝、ヘミニク少年は「おい、打ちに行くべ」という声にたたき起こされた。

友人の中で一番ヤンチャな佐々木だ。

彼は高校を中退しているが、見た目はお兄系 (当時流行ってた) でイケメンなので女には困らないという、この世の不条理を絵に描いたようなヤツだ。

彼を便宜上お兄佐々木と呼ぶことにしよう。

 

そしてもう一人の友人もこれまた困った奴だった。

女にも金にも時間にもルーズでパチスロが好きという、典型的なダメ男であった。

この時点では学生だが、数年後にはニートになるので、彼を便宜上ニート大西と呼ぶことにしよう。

三人とも幼少期からの腐れ縁の仲。

なおこの三人の中で童貞なのはヘミニク少年だけである。

二人には童貞じゃないと言い張っていたけれど。

パチスロに悪友はつきものだ

向かった先はパチスロ設置80台程度のさびれた小規模店。

お兄佐々木が言うには、今日は「北斗の拳」 のイベント日らしい。

開店と同時に到着し入店すると、店内はガランとしていた。

閑散とした店内で台を確保し打ち始めるお兄佐々木とニート大西。

ヘミニク少年にとっては久しぶりのパチ屋だったが、打つつもりは無かったので二人の打つ姿を眺めていた。すると…

「見てんなら向こうの台打って」

そう言ってお兄佐々木は僕の手の中に一万円を握り込ませた。
 
北斗は設置20台ほどなので、全員で探した方が早く当たり台に辿り着けるという理屈である。

よく見ると、ニート大西もお兄佐々木から金を貰って打っていた。

いわゆる打ち子ってやつだ。

慣れた動きで次々と台を移動しながら諭吉を入れる二人の姿は、これまで見た事のない本気の背中だった。
 

ヘミニク少年にとって大花火以来となるパチスロ。

ニート大西が「北斗は中押しだ」 というので中から適当に押す。

しばらくするとお兄佐々木が駆け寄って来た。

「おい、当たってっぞ!」

液晶にボーナス確定の文字、いつの間にか当たっていたらしい。

「その台良さそうだな。後は俺が打つわ」

 そう言ってお兄佐々木はニート大西の台もヤメさせ、その台に腰を据えて勝負を始めた。

ダメな台を見切って良い台を打つ。

ニート大西曰く、これがパチスロの勝ち方らしい。

ただのギャンブルだと思っていたパチスロに対して、何らかの勝ち筋を見出そうとする二人に、僕は少しばかりの尊敬と関心の気持ちを抱いた。

もしやこの二人はパチスロのプロなのではないのかと。

それから6時間ほど経っただろうか。

ヒマ潰しにパチンコの羽根モノを並んで打つヘミニク少年とニート大西のもとに、お兄佐々木がやって来た。

お兄佐々木…いや、スロプロ佐々木。

本日はおいくら勝てたのですか?

「7万負けた。帰んべ!」

 そう言い放って急ぎ足に車へと乗り込むお兄佐々木。

7万円という額は、当時の僕からすれば途方もない大金だった。

行きよりも荒めの運転で車を飛ばすお兄佐々木に、かける言葉は持ち合わせていなかった。

こうして久しぶりにパチスロに触れ、その恐ろしさをまざまざと感じたヘミニク少年。

しかし彼は知らなかった。

この数日後に、7万円を超える負け額をヘミニク少年自身が喰らうことになろうとは…。

青春をささげた1台

パチスロ北斗の拳

2003年に登場。

累計販売台数62万台、パチスロ史上最も売れたマシン。

バトルボーナスのシステムは15年経った今でも多くの機種に採用されており、パチスロの方向性を決めた機種と言っても過言ではない。

過去の自分へ

お兄佐々木もニート大西もパチスロの知識と目押し力はかなり高かったが、今思えばどちらもただのパチスロ好き…いやジャンキーである。

パッと見は上手そうに見えるが、彼らの真似事をしても散財するだけだ。

 

 

 

 

(C)武論尊・原哲夫/NSP 1983 版権許諾証SAB-302,


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