
皆さん、こんにちは。ジェイさん@発信する遊技機クリエーターです。
いきなりですが、パチンコ・パチスロを遊技するにあたって触れる機会が多い『抽選』という言葉の意味について考えたことはありますか? ホールに行けば「入場抽選」「ボーナス抽選中」「昇格抽選中」と、当たり前のように『抽選』という言葉を目にしますよね。
一方で、パチンコ・パチスロを開発する上で重要な遊技機規則やその解釈基準では『抽選』という言葉は使われておらず、『抽せん』という表記が使われています。実は、私のパチマガスロマガFREEに寄稿している過去のコラムでも、『抽選』ではなく、基本的には『抽せん』という表記を使っていました。
今回は、そんな『抽選』と『抽せん』の違いについて、遊技機を作る側の視点からお話しします。
本来の表記は『抽籤』
まず、日本語としての表記から確認していきましょう。『ちゅうせん』と読む語は、本来は以下のように書きます。
◆抽籤(ちゅうせん)
この『籤』という字は、そのまま『くじ』を意味します。
パチンコ・パチスロの内部処理は、まさに見えないところで平等にくじを引き続けているので、概念として一番しっくり来るのは、本来の表記である『抽籤』です。
ただ、ここで引っかかるのが「常用漢字」のルールです。『籤』は常用漢字ではないため、公用文ではできるだけ使わないことになっています。そのため、公的な文書では以下のように「ひらがな」で表記する形が取られています。
◆抽籤 → 抽せん
遊技機規則や解釈基準もこの方針に従っており、『内部抽せん』『当せん確率』といった表記で統一されています。つまり、法令用語として正しいのは『抽せん』(抽籤)。これが最初のポイントです。
なぜ『抽選』ではなく『抽せん』なのか
『抽選』という言葉自体は日常語として広く使われていますし、ホール現場でも『入場抽選』はおなじみのワードです。ただ、漢字をよく見てみるとニュアンスが変わってきます。
遊技機の内部処理について、規則上守りたいポイントはいたってシンプルで、『内部処理は人間の意思を一切介さない「くじ」でなければならない』ということです。 一方で、『選』という字は、選挙や選考で使われているイメージからも分かるように、人の意思が介入するというニュアンスが含まれています。
つまり、あえて規則で『抽せん』と書いているのは、「これは人の意思が入った選考ではなく、あくまで平等なくじ引きですよ」というメッセージなのです。
液晶には普通に出てくる『昇格抽選中』
とはいえ、現行機の画面表示を見てみると『昇格抽選中』『特化ゾーン抽選中』など、『抽選』という文字は普通に登場します。
この理由は「ユーザー向けの表記としては、むしろ『抽選』のほうが見慣れていて違和感がない」というのが正直なところだからです。ここには「法令用語に寄せたい」という事情と、「ユーザーに直感的に伝えたい」という事情のギャップがあります。
結果として、試験機関に提出する資料上は『抽せん』、画面では『抽選』と、目的に応じて書き分けているメーカーも少なくありません。
おわりに
現実問題、打ち手目線では『抽選』のほうがしっくりくるという方が多いと思います。また、これだけ出現確率が荒れる機械が多くなってきたことで、完全確率ではなく、何か操作が入っているのではと感じる方もいるでしょう。
しかし、実際の機械の『抽せん』は、人の意思を介さない平等なくじを引き続けているのだということを、大ハマリしているときなどにこのコラムの内容とあわせて思い出してもらえたらと思います。
さて、急ではありますが、パチマガスロマガFREEでの連載は今回でいったん終了です。パチスロをはじめてからずっと読者であったスロマガでコラムを書けて最高でした。またどこかで会いましょう!
原作/藤田和日郎「うしおととら」(小学館刊) (C)藤田和日郎・小学館/「うしおととら」製作委員会


