はじめに
虚心坦懐のGoing Underground、第120回。
今回は、平成初期のお話です。
今も昔も、釘調整は風営法で厳しく禁止されています。ただ、その一方、かつて昔は慣例的に"おめこぼし"されてきた、という歴史もあったりします。
当時のホールは、まだまだハネモノや一発台がにぎわっており、主役の一角でした。そして、そんなアナログな台を稼働させる上で欠かすことのできない、「釘師」と呼ばれる釘調整を職業とするプロの方が全国にいました。
釘師たちは一見勝てそうな釘に見せるのが非常に上手く、これによって客付も良くなり、好評であった。いわゆるだまし釘を作る「釘師」と、それを見抜く「パチプロ」の心理戦、みたいな構図もできあがっておりました。
実は私・虚心は、そんなホンモノ釘師の下で、数ヶ月間お手伝いをさせていただいた経験があります。そこで本稿では、実際に虚心がこの目で見てきた、釘師の師匠の仕事の話をしていきたいと思います。
釘師の給料
当時の釘師の相場は、1台あたり800~1200円。数軒のホールを掛け持つことにより、年収4桁も可能な職業でありました。
因みに、随分昔から釘師をやられていた師匠の場合、釘を叩く所要時間は1台あたり1、2分…つまり、分給400~600円。そうなると、お店の規模にもよるが日当でだいたい5~10万円でした。
仕事に行くのは毎日ではなく、週2~4回というような感じの契約が多かった印象でした。例えば、回収を目的とする土・日・祝日前日とその最終日は、最低限というような感じで…。月に80~150万ほどのお金をもらっていました。
実は、ホールの雇われ店長より格段にお給料が良かったこともあり、従業員にはお金の話をしないようにいわれていたとか…(笑)。
釘師のルーティン
釘を叩くのは当然閉店してから、ということで、釘師は非常に早起き。深夜2時には起床し契約しているホールへ、3時には釘を叩き始め、朝の8時くらいには叩き終え、時にはホールの状況などを見て昼前には帰宅し、17時くらいには寝る、という生活をしていました。
そのため、夜、遊びにいくことなども全く無く、お酒も全く飲まない方でした。生活習慣が合わないということで離婚をされており、唯一の趣味は料理で、非常に手の込んだお料理を振る舞っていただいたこともありました。
しかし、時は流れてデジパチがホールの主役になると、ヘソの開け閉めをするだけのホールが多くなり、釘師を頼らず、そのホールの店長が釘を叩くようになり、仕事が減っていきました。
まとめ
虚心は、釘師の師匠の下で数ヶ月お手伝いをさせていただきましたが、ほとんどが中古のハネモノで、ぐちゃぐちゃにされたものを元に戻す作業でした。交換率が異なるホールに導入する場合、全く釘の環境も変わりますからね。
師匠は、虚心がライターになる頃には既に釘師を引退されており、話によると当時の釘師のほとんどは、コンサルなど他の業種に転向されたと聞きました。
昔は同じ機種でも店によって釘が全然違いました。そのため、店ごとに色がありました。が、現在は時代も変わって、釘曲げへの"おめこぼし"なんてもってのほかになりました。
今のハネモノがそこまで人気にならないのも、個性の強い釘師の方がいなくなったことによるのかもしれませんね。その意味で、設置機種も釘状況も大きく変化のない今のパチンコ屋巡りはつまらなくなった、とも言えます。
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