※過去の「栄光なき名機たち」記事
チワッス、あしのです!
パチスロ界に燦然と輝く名機たちの傍らでひっそりと咲く佳作を紹介するこちらの企画、今回は2012年にビスティがブチ込んだ「夜王」について。
これビスティ謹製の機械にしては絶妙に知名度が低い機種だと思います。なんせ2012年という5号機版AT機が盛り上がってきたタイミングに出たART機である上に、原作が激シブでホールでの扱いもそこまで良いとは言えず。
なので「打ったことない」あるいは「存在を知らない」というもかなり多いんじゃないでしょうか。
もともとの「夜王」はかの倉科遼先生が原作です。
御大の作品はだいたい新宿とか渋谷とかの舞台にした水商売モノでありまして、ホステスが主人公の「女帝」、キャバ嬢が主人公の「嬢王」に続き、本作はホストが主人公のサクセスストーリーとなっております。
んで夜の街を舞台にしたそういう作品というと、なんか華やかな中にも策謀が渦巻くドロドロした展開とか寝取り寝取られの愛憎劇みたいなのを期待しちゃうのですがこの作品に関してはそういう後ろ暗い感じはほぼなく、どっちかというと「スポ根」のノリに近いのが大きな特徴です。
なんせこの作品の主人公・遼介くんはなんかあるたびに「ウォォォ!」と雄たけびをあげるというかなり暑苦しい奇癖を持っており、さらにストーリー的にも何か事件が起きるやホストのテクとかそういうのはあんまり関係なしに全て拳で解決するという身も蓋もない展開が続きます(しかも最後まで)。
マジで「策謀」も「ドロドロ」もなんもないですし、あとに残る読後感は「ホストになりたければまず身体を鍛える必要があるんだな」という間違った知識のみ。
基本的に主人公が「ウォォォ!」っていいながら立ちはだかる敵をなぎ倒していくその姿はパチスロでもしっかり再現されており、そういう意味での原作愛は高め。かつ原作知ってる人からすると非常に笑える台でした。
だけどやっぱそもそもの知名度がそこまで高い作品ではないですし、知る人ぞ知る、文字通り「栄光なき名機」かもしれません。
ビスティ/5号機/2012年
システムもバカだった
はい、そしてこのパチスロ版「夜王」ですが、演出のみならず「システム」でも原作の突き抜けた世界観を再現してました。
ちょっと言葉で説明するのが難しいのですが、これ台のオモシロさが全部上乗せ特化ゾーンである「VIPタイム」に集約されていたんですね。
VIPタイムはざっくり「リプレイ以外の全役で上乗せ&ゲーム数再セットが行われるST」で、規定ゲーム数は5ゲーム。要は5ゲーム以内にリプレイ以外の役が引ければ上乗せが発生してゲーム数も5に戻るわけです。
んでこれ上乗せが発生した際にVIPがさらに太客になる抽選が行われており、それにパスするとゲーム数が最大で10までアップ。10G以内にリプレイ以外を引け! というのは史上稀にみるくらい簡単な上乗せ条件に見えますし、1回その状態になるとマジで「これ一生続くんじゃねぇか」くらい続いてた気がします。
実際、VIP10状態の継続率は95%程度だったとのことで、終わる時は普通に終わっちゃうんですけども、でも筆者もこれ1回VIP10でアホみたいに連チャンしましたし、あんま覚えてないですけども上乗せの合計数もイカつい感じになってたと思います。
んでこの台の面白さはVIP10に上がる瞬間にギュッと詰まっておる一方、恐ろしいことにそんな状態もしばらくすると飽きてくるんですね。上乗せ特化ゾーン中でありながら「早よ終わらんかな」と思わせるまであるという。
でも、終わったら終わったで他に目指すべきところもないので「また10に上がらんかな」と思いながら打つことになるので、大量上乗せのあとはだんだんと賽の河原で石積んでるような気分になります。
なんかボロクソ言ってますが、しかしトータルで考えると「なんか面白かった」という評価になるので、ある意味ではマジで「夜王」っぽいっちゃ「夜王」っぽい機種です。
システムで原作を再現するというのは口でいうほど簡単なことじゃないと思うのですが、この機種に限ってはそれが見事に成功してたと思います。好きか嫌いかでいうと、やっぱこれは好きな台でしたね。
いまこれを丸一日打て!って言われたら相当キツイですけど、当時は並み居る名機たちのなかでも、割と好きなほうに位置してたんで、それはそれですげー話だと思います。
それくらい、VIP10に上がった瞬間の脳汁がすごかった、ということでしょうな。
それしかなかった、とも言えますけども、それでいいんです。夜王だし。
(C)倉科遼、井上紀良/集英社 (週刊ヤングジャンプ) (C)artist house PYRAMID (C)Bisty